TSUYOMI研究コラム 11
1.問いの提示
TSUYOMI診断は、何を診断しているのでしょうか。
診断という語からには、能力の測定や優劣の判定を連想しがちです。しかし、本研究室で扱ってきたTSUYOMIは、強みそのものでも、成果指標でもありません。判断の系列から推定される構造でした。
では、診断はその構造をどのように扱っているのでしょうか。
TSUYOMI診断の対象を明確にしなければ、実務OSとしての位置づけは曖昧になります。
2.通説の整理
一般的な経営診断は、次のいずれかを対象とします。
- 財務状態
- 組織能力
- 戦略の妥当性
- 経営者の特性
これらは観測可能な指標や行動に基づいて評価されます。質問票やインタビューを通じてデータを収集し、その結果を分析するという形式が一般的です。
しかし、TSUYOMIは直接観測できる対象ではありません。第2回で整理したとおり、TSUYOMIは判断の反復から推定される構造でした。
したがって、TSUYOMI診断は、能力や成果を直接測定しているわけではありません。
3.TSUYOMIからの再定義
TSUYOMI診断が行っているのは、判断生成構造の推定です。
現在のMVPでは、いくつかの設問を通じて、経営者の判断傾向を把握しています。たとえば、リスク選好、時間志向、成長に対する姿勢などに関する問いが含まれています。
しかし、設問そのものがTSUYOMIではありません。
重要なのは、回答の背後にある一貫した傾向です。複数の設問に対する回答の組み合わせから、どのような判断前提が働いているかを推測しています。
ここでの診断は、評価ではなく推定です。直接測定できない構造を、回答パターンを媒介として推論しているにすぎません。
したがって、TSUYOMI診断とは、判断系列の縮約版を用いて、経営判断生成構造を暫定的に可視化する試みであると整理できます。
4.実務への含意
この理解は、診断結果の扱い方に影響します。
診断結果は「あなたのTSUYOMIはこれである」と断定するものではありません。むしろ、「現在の回答傾向からは、このような判断前提が推定される」という暫定的な整理です。
そのため、診断結果は最終結論ではなく、対話の出発点となります。
- なぜそのように回答したのか。
- 実際の判断履歴と整合しているか。
- 違和感はないか。
これらを検討することで、診断は単なるテストではなく、構造を意識化する装置になります。
TSUYOMI診断は、判断生成構造そのものではなく、その入口です。
5.未解決点の提示
もっとも、回答パターンから構造を推定することには限界があります。
自己申告の偏りはどの程度影響するのでしょうか。質問数が少ない場合、推定の精度はどこまで担保できるのでしょうか。
また、回答と実際の判断行動が一致しない場合、どちらを優先して解釈すべきでしょうか。
TSUYOMI診断の妥当性を検討するためには、推定を支える構造仮説を明確にする必要があります。
次回は、「TSUYOMI診断の構造仮説」について整理します。