TSUYOMI研究コラム 07
1.問いの提示
TSUYOMIは、硬直化するのでしょうか。
前回、TSUYOMIは判断の反復と意味づけの共有によって安定化すると整理しました。しかし、安定化が進むことは、同時に固定化が進むことでもあります。
判断の方向性が明確になり、一貫性が強まることは望ましい側面を持ちますが、その一方で環境変化への感度が低下する可能性もあります。
では、TSUYOMIはどのようなときに硬直化し、どのような条件でそれを回避できるのでしょうか。
2.通説の整理
組織論において、硬直化はしばしば制度や成功体験の蓄積と結びつけて説明されます。
過去の成功が強い確信を生み、その確信が新たな選択肢を排除する方向に作用することがあります。経験の蓄積は安定性をもたらしますが、同時に探索の範囲を狭めることもあります。
アージリスとショーンが指摘したように、組織は自らの前提を守る方向に働く傾向があります。また、ティースが論じた再構成能力も、既存の枠組みに過度に依存すると機能しにくくなります。
このように、安定性と硬直性は隣接した現象として理解されています。
TSUYOMIの文脈でも、同様の問題が生じる可能性があります。
3.TSUYOMIからの再定義
TSUYOMIの硬直化とは、判断を方向づける前提が、検討の対象とならなくなる状態であると整理できます。
安定化の過程では、判断の反復によって前提が強化されます。しかし、その前提が暗黙のまま固定されると、新たな状況に対しても同じ基準が無条件に適用される可能性があります。
ここで重要なのは、硬直化はTSUYOMIそのものの存在によって生じるのではなく、前提が無自覚に固定されることによって生じるという点です。
TSUYOMIは構造であり、価値判断ではありません。その構造が適切であるかどうかは、環境との関係の中で決まります。したがって、硬直化とは、構造が変化しないことそのものではなく、構造の妥当性を検討する機会が失われることを意味します。
TSUYOMIが安定していることと、硬直していることは同じではありません。
4.実務への含意
実務においては、TSUYOMIを強化することと、TSUYOMIを絶対視することを区別する必要があります。
判断の一貫性が成果につながっている場合、その前提は維持される傾向があります。しかし、その妥当性を定期的に問い直す仕組みがなければ、前提は固定化し、環境変化への応答力が低下する可能性があります。
具体的には、次のような取り組みが考えられます。
- 重要な判断の前提を明示的に言語化する
- 過去の成功事例を再解釈する
- 異なる視点からの意見を意図的に取り入れる
これらはTSUYOMIを否定するためのものではなく、構造を自覚的に扱うための営みです。
TSUYOMIの成熟とは、構造を固定することではなく、構造を扱える状態に近づくことだと考えられます。
5.未解決点の提示
もっとも、前提を常に問い直すことは、安定性を損なう可能性もあります。どの程度の頻度や強度で見直しを行うべきなのでしょうか。
また、外部環境が急激に変化した場合、硬直化した構造はどのように再編されるのでしょうか。再編は段階的に進むのか、それとも断絶的に生じるのでしょうか。
TSUYOMIと硬直化の関係をさらに理解するためには、構造の再編プロセスを検討する必要があります。
次回は、「TSUYOMIと再編の契機」について整理します。