TSUYOMI研究コラム 03
1.問いの提示
TSUYOMIは変化するのでしょうか。
前回、TSUYOMIは判断の系列から推定される構造であると整理しました。しかし、構造であるならば、それは固定的なものなのか、それとも時間とともに変化しうるものなのかという問いが生じます。
もしTSUYOMIが容易に変化するのであれば、構造としての安定性は弱まります。
反対に、まったく変化しないのであれば、環境変化への適応とどのように整合するのかが問題になります。
TSUYOMIの変化可能性を検討することは、概念の射程を定めるうえで重要です。
2.通説の整理
経営理論では、組織の基盤的構造は一定の安定性を持つと考えられることが少なくありません。
たとえば、アージリスとショーンは、ダブルループ学習を通じて組織の前提が問い直される可能性を示しましたが、その前提自体は通常、容易には変化しないものとして扱われています。
また、ペンローズの議論においても、企業内部の資源の活用は、既存の能力や経験の蓄積に依存しています。すなわち、組織の基盤には一定の持続性があることが前提とされています。
一方で、環境変化への適応能力を論じたティースの枠組みでは、企業は自らの能力構造を再構成できるとされます。
このように、組織の基盤は安定的であると同時に、再構成可能であるという二面性が指摘されています。
TSUYOMIは、このどこに位置づけられるのでしょうか。
3.TSUYOMIからの再定義
TSUYOMIは、短期的には安定し、長期的には変化しうる構造であると暫定的に整理できます。
判断の系列から推定される構造は、日々の意思決定によって頻繁に変わるものではありません。一定の時間幅においては、判断の傾向は比較的安定して観察されます。
しかし、その安定性は絶対的なものではありません。
重大な失敗、世代交代、外部環境の急激な変化などを契機として、判断の前提が見直される場合があります。そのとき、判断の系列に変化が生じ、結果として推定される構造も変わります。
したがって、TSUYOMIは固定的な本質ではなく、履歴を持つ構造であると考えます。
それは、瞬間的に書き換えられるものではありませんが、経験の蓄積や反省を通じて徐々に変容する可能性を持ちます。
4.実務への含意
この整理は、TSUYOMIの扱い方に影響します。
もしTSUYOMIが完全に固定的なものだとすれば、経営者はそれに従うしかありません。しかし、TSUYOMIが長期的に変化しうる構造であるならば、判断の反省を通じてその方向性を見直すことが可能になります。
実務においては、次のような視点が有効です。
- 判断の履歴を定期的に振り返る
- 判断の前提が妥当であったかを検討する
- 新たな経験が判断傾向に影響しているかを確認する
ここで重要なのは、TSUYOMIを意図的に「作り替える」ことではありません。むしろ、判断の蓄積の中で変化が生じているかを自覚することです。
TSUYOMIは操作対象というより、反省の対象と捉える方が適切です。
5.未解決点の提示
なお、TSUYOMIが変化するとして、その変化はどのような条件で生じるのでしょうか。
変化は内部から生じるのか、それとも外部環境によって促されるのか。
変化の速度や方向性はどのように規定されるのか。
さらに、変化と一貫性はどのように両立するのでしょうか。
TSUYOMIの変化可能性を検討することは、安定性の条件を明らかにすることでもあります。
次回は、「TSUYOMIと一貫性の関係」について整理します。構造の持続と適応の均衡をどのように理解すべきかを検討します。